監修/特定社会保険労務士 岡 佳伸

2013年、労働契約法が改正されました。
これにより、有期契約で5年以上同じ職場で働いた人は無期契約に切り替えることができる、いわゆる「無期転換ルール」が誕生し、契約社員やパート・アルバイトなどの有期契約労働者は、契約打ち切りの不安なく、安定して長く働けるようになったのです。

一方で、雇用主である企業側には配慮すべき事柄があります。

この記事では、改正労働契約法の内容をわかりやすく説明していきます。
これを読めば、改正労働契約法がよく理解でき、労使ともに満足できる環境の確保につながることと思います。ぜひ最後まで読んでみてください。

1 わかりやすい!改正労働契約法 3つのポイント

労働契約法が改正された大きな目的は、有期契約で働く労働者の安定です。

契約社員やパート、アルバイトなど、雇用期間を区切って労働契約を結んでいる人たちは、同じ職場で長く働き続けたいと願っていても、契約期間が満了すれば企業側の裁量で契約更新を打ち切られてしまう不安を抱えています。

労働契約書のイメージ

「1年ごとの更新で3年間勤めてきたのに、次の更新をしてもらえなかった。また新しい仕事を探さなくてはならない…。」といった状況に陥る、いわゆる「雇い止め」です。

そこで有期契約の労働者でも安心して長く働けるように、労働契約法を改正したというわけです。

改正後は、3つのルールが新しく誕生しました。

●改正労働契約法 3つのルール

I 無期労働契約への転換有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルール
II 「雇止め法理」の法定化最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定された。一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルール
III 不合理な労働条件の禁止有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルール

参照:厚生労働省「労働契約法改正のポイント

では、それぞれの内容をわかりやすく説明していきましょう。

無期労働契約への転換

改正労働契約法の3つのルールの中で最も注目度が高いのが、「無期労働契約への転換」です。

これにより、有期契約で働いている人が、契約を何度か更新されたのち、契約期間の合計が5年を超えた場合は、本人が希望すれば有期契約ではなく、無期契約に切り替えることができるようになります。その後は契約更新の必要はなく、基本的には企業側の都合で契約を切られることもなくなります。

労働者側は無期転換の申し込みをすれば、企業側はこれを拒否することはできず、必ず転換しなければなりません。

この制度は「無期転換ルール」と呼ばれていますが、少しわかりにくいために、意味を誤解している人も多いようです。

そこでもう少し詳しく解説していきましょう。

「無期転換ルール」:勤続5年を超えると無期契約になれる

無期転換ルールとは、有期契約労働者が同じ企業と有期契約を繰り返して、契約期間が合計で5年を超えれば、労働者側の申し立てにより、無期契約に切り替えられるというものです。この「5年」のカウント方法が少しわかりにくいかもしれません。

下の図を見てください。

無期転換の図

これを具体的に説明すると、以下のような流れになります。

■1年更新の契約の場合は、更新を繰り返して、
1. 契約期間の合計が5年を超えた時点で、有期契約労働者側から「無期契約に転換してほしい」という申し込みができるようになる
⇒ この時点で無期契約に切り替える必要はありません。
2. 申し込みをすると、次の契約更新時に無期契約に切り替わる
⇒ 実際に無期契約社員に切り替えるのは、6年間以上勤続した後のことです。

■3年ごとに更新される契約の場合は、更新を繰り返して、
1. 契約期間の合計が5年を超えた時点、つまり【 3年 × 2回更新 = 6年の契約を結んだ時点】で、有期契約労働者側から「無期契約に転換してほしい」という申し込みができるようになる
⇒ 2回目の契約を結んだ時点で無期転換ルールが適用されますので、勤続期間は5年未満でも、申し込み可能です。
2. 申し込みをすると、次の契約更新時に無期契約に切り替わる
⇒ 実際に無期契約社員に切り替えるのは、2回目の契約が終わった翌日以降です。

無期契約が適用されるための3つの条件

さらに、有期契約の人に無期転換ルールが適応されるには、以下の3つの条件を満たしていることが必要です。

1.使用者が同一
同じ企業と5年を超えて契約を結んでいた場合に限ります。
仮に5年の間に勤務先の事業所が変わったとしても、契約している企業が同じであれば一連の契約として合算されます。

例えば、A社と有期雇用契約を結んで、本社に3年勤務した後に、系列会社であるB社に出向になったが、雇用契約はA社のままでさらに2年たった、という場合は、B社での勤務期間も合算されますので、合計5年で無期転換ルールの対象になるわけです。

2.契約更新回数が1回以上
5年の契約期間中、最低でも1回以上は契約更新をされている必要があります。

3.有期労働契約の通算期間が5年を超える
これは前掲した図のように計算します。

以上3点が満たされていれば、誰でも無期契約への切り替えを申し込むことができ、企業側はこれを拒否することはできません。

申し込みの時期と期間

無期転換の申し込みは、有期契約期間が通算5年を超えたときから、その契約が満了する日までの間ならいつでもできます。
もし有期契約労働者がその間に申し込みをしなかった場合でも、また次の有期契約を更新していれば、その契約期間中いつでも申し込むことが可能です。

また、申し込みには決まった書式などはなく、労働者側から企業側へ口頭で転換希望を伝えただけでも有効ですが、トラブルを避けるためには、必ず書面に残すことをお勧めします。
以下の書式を参考にしてください。

●無期労働契約転換申込書・受理通知書の様式例

無期労働契約転換申込書・受理通知書の様式例

無期契約への転換タイミング

無期転換の申し立てがあっても、すぐに無期契約に切り替える必要はありません。最後の有期契約の期間を満了した翌日から無期契約とすることが必要です。

クーリング期間:勤続中に6カ月以上空白期間がある場合

「契約期間通算5年」は、必ずしも連続して契約し続けた場合だけに限りません。途中で契約が途切れた期間があっても、同じ企業との契約であれば、合算できる場合があります。

合算できるかできないかは、契約が途切れた期間によって決まります。
6カ月以上の空白期間があれば、それ以前の契約期間は「5年」に含めることができません。これを「クーリング」と呼んでいます。つまり、有期契約労働者が同じ会社と契約していても、途中で6カ月以上契約が途切れてしまったら、その後に再契約したとしても、「通算5年」の計算はリセットされ、また1年目からカウントされるわけです。
詳しくは下の図を見てください。

クーリングの図

「雇い止め法理」の法定化

次に、2番目の「雇い止め法理」の法定化について説明しましょう。

有期契約の労働者に対しては、企業側の都合で契約更新を拒否することができます。いわゆる「雇い止め」です。
契約期間中に退職させる「解雇」とは違い、契約を満了していますので本来は問題ないものです。ただ、過去に最高裁の判例で、「今まで何度か更新してきたのに、合理的な理由もなく雇い止めした場合は無効になる」というルールが生まれました。そのルールを、正式に法制化したのが改正労働契約法です。

具体的には、
1. 契約社員の契約更新が毎回、適切になされておらず、実質的には無期契約の正社員と同じような状況だった場合
2. 有期契約の人が「今まで通り、次回も更新されるはず」と期待するのが当たり前な状況だった場合

これらに当てはまるケースでは、雇い止めの無効を主張することができます。

つまり、労働者側に何の問題もなく、企業側にも合理的な理由がないのに、不当に雇い止めを行った場合には、この「雇い止め法理」によって労働者側から無効を訴えられる可能性があります。

不合理な労働条件の禁止

次に、3つ目の「不合理な労働条件の禁止」について説明します。
わかりやすく言えば、

◼️有期契約の労働者と無期契約の正社員との間で、「有期契約か無期契約か」というだけの理由で雇用条件や待遇に差をつけてはいけない

ということです。仕事の内容や責任の重さが違う場合は、給与などに差があっても認められますが、同じ仕事・責任を担っているのに、「契約社員だから」というだけの理由で給与を低くするのは禁止されています。

また、正社員と契約社員、アルバイトの出勤日数や所定労働時間、異動の有無にかわりがないのに、
「正社員は交通費全額支給なのに、契約社員やアルバイトは支給額に上限がある」
「契約社員に皆勤手当が支給されない」
といったことがあれば、不当な差別として改正労働契約法違反に問われますので、注意が必要です。

2 改正労働契約法の注意点

定年後の再雇用者の特例認定

正社員が定年を迎えた後に、有期契約に切り替えて雇用を継続する再雇用制度を採用している企業も多いことでしょう。

その場合にも無期転換ルールは適用されますが、こちらについては定年後の無期転換に関する特例として「有期雇用特別措置法」が設けられました。

これは、適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で、定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)には、無期転換を申し込む権利が発生しない、というものです。

この特例を受けるには、企業側が本社・本店を管轄する都道府県の労働局に申請して認定を受ける必要があります。

定年後の社員の再雇用を行っている企業は、この手続きがあることを認識しておく必要があります。

3 企業側が対応すべきこと

では、これらの注意点を踏まえて、どのような対応をすればよいのでしょうか?

まず最初に決めなければいけないのは、今後無期転換を希望する人に対して、会社としてどう対応するのかという基本方針です。これを明確にしておく必要があります。

また、キャリアアップ助成金制度の活用も、視野にいれましょう。無期転換をはじめ、有期契約労働者の待遇改善に取り組む企業に対しては、厚生労働省から助成金が出る制度が用意されています。これが「キャリアアップ助成金」という制度です。待遇改善の内容によって、以下の7つのコースがあります。

●キャリアアップ助成金の7つのコースと支給条件

コース助成金支給の条件
正社員化コース有期契約の人を正社員にした、または直接雇用にした場合
賃金規定等改定コース有期契約の人の基本給を増額、賃金規定などを改定した場合
健康診断制度コース有期契約の人を対象に「法定外の健康診断制度」を新たに実施した場合
賃金規定等共通化コース有期契約の人と正社員との共通の賃金規定などを新たに規定・運用した場合
諸手当制度共通化コース有期契約の人と正社員との共通の諸手当制度を新たに規定・適用した場合
選択的運用拡大導入時処遇改善コース社会保険の適用拡大によって、保険適用されることになった有期契約の人の賃金を上げた場合
短時間労働者労働時間延長コース有期契約の人の週あたりの所定労働時間を5時間以上延長し、社会保険を適用した場合

この中で、改正労働契約法、特に無期転換に関わるのが「正社員コース」です。

「正社員コース」という名称ではありますが、適用条件には無期転換の場合も含まれます。具体的な適用条件と助成金額は以下です。

●キャリアアップ助成金「正社員化コース」の条件と助成額

助成金コース 助成される条件 助成金
転機の内容 中小企業の場合 大企業の場合
正社員化コース 有期契約の人を正社員にした、または直接雇用にした場合 有期⇒正規 57万円 42万7500円
有期⇒無期 28万5000円 21万3750円
無期⇒正規 28万5000円 21万3750円

キャリアアップ助成金を希望する場合は、事前に各事業所を管轄する労働局にキャリアアップ計画を申請し、認定を受ける必要があります。

4まとめ:企業として改正法に適応した方針を定め、労使双方が満足できる職場環境の実現を

この記事では、改正された労働契約法の詳しい内容について解説してきました。
あらためて要点をまとめてみましょう。

1)改正労働契約法 3つのポイントとは、
◎無期労働契約への転換:契約期間の合計が5年を超えれば無期契約になれる
◎「雇い止め法理」の法定化
◎不合理な労働条件の禁止

2)改正労働契約法の注意点は、
◎無期転換を希望されたら企業側は拒否できない
◎定年後の再雇用者にかかる特例認定の理解が必要
◎無期契約者向けの就業規則の整備が必要

3)企業側が対応すべきことは、
◎方針を決める
◎キャリアアップ助成金制度の活用を検討する:都道府県の労働局にキャリアアップ計画の申請をして認定を受ける

2019年4月からすでに適用が始まっている無期転換ルール。人事や労務の現場では思わぬ問題も起きているかもしれません。この記事により、あなたの会社でも労使双方がより満足いく労働環境が整えられていくことを願っています。

あわせて読みたい記事

監修

岡 佳伸

社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表。特定社会保険労務士。元埼玉労働局職員(厚生労働事務官)、大手人材派遣等で人事労務を担当する。2016年より現職。キャリアコンサルタント等保有資格多数。

「リクナビHRTech 勤怠管理」は、勤怠情報の一元化を実現するクラウド型の勤怠管理システムです。
「勤怠情報の整理に時間がかかる」「法改正に対応できるか不安」「外出時の打刻ができない」といった、管理者と従業員双方のお悩みをまとめて解決します。

お手持ちのPC・タブレット・スマートフォン・携帯電話で、場所を選ばずリアルタイムに打刻することが可能。スマートフォン・携帯電話の場合、GPSを用いた位置情報の取得も可能です。
さらに、毎月の勤怠情報を整理する手間を削減し、法令の改正時には改正内容に沿って機能がアップデートするので、対応漏れの心配も要りません。

30日間無料トライアルですべての機能をご利用いただけます。まずは、その操作性と利便性をご体感ください!