取材協力・ 監修/株式会社人材研究所 曽和利光

組織の目標達成やメンバーの支援のために目標管理制度を導入しても、スムーズに運用できず、成果が出ていないケースも少なくはないようです。この記事では、本格的に目標管理制度の運用を始めようとしている企業の人事担当者に向けて、個人目標の設定手順と役に立つフレームワーク「SMART」をご紹介します。人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける株式会社人材研究所の代表・曽和利光さんによる解説で、よりスムーズな目標管理を実現しませんか?

この記事のポイント
  • <1>【部下の目標設定を支援する「現場のマネージャー」の理解促進に役立つ!】 →目標管理制度の運用では、メンバーと直接コミュニケーションを取るマネージャーの理解促進が成功の鍵です。人事担当者が要点を理解し、伝えていきましょう。
  • <2>【現場との擦り合わせを行う「役職者」に向けた説明資料に使える内容】 →事業目標の設定や擦り合わせを行う役職者への理解を仰ぐこともポイントです。目標設定の具体的な手順を解説するこの記事を活用し、組織全体のスムーズな運用につなげましょう。
  • <3>【現場マネージャーがすぐに使えるフレームワーク「SMARTの法則」を紹介】 →現場マネージャーがメンバーの個人目標を設定する際に使えるフレームワーク「SMARTの原則」をご紹介。使ってはいけないNGワードも把握できます。

詳しく知りたい方は続きをご覧ください。

目標管理は、「目標による自己管理」を支援するためのもの

目標管理制度は、「メンバーを目標によって管理するためのもの」と誤解されがちです。しかし、本来の目的は、「メンバーが自律的に目標を意識しながら成果を出し、成長していくことを支援すること」にあるのです。

個人の目標を設定する際には、社員の自発性を促し、個々の能力や創造性、パフォーマンスを引き出すものとすることが重要なポイントとなります。ノルマを課し、成果を管理することが目的ではないという大前提を、現場のマネージャーにしっかりと理解させましょう。

個人目標は、事業目標から落とし込む。「個人目標設定 5つのステップ」

メンバーの「個人目標」の設定においては、「事業目標」の設定や共有が重要なポイントとなります。組織全体の目標達成に向かうため、各部門に配分された事業目標の共有と擦り合わせを行い、現場のチームにおける目標、メンバー個人の目標へと落とし込んでいきましょう。

個人目標の設定の前段階として事業目標の配分を検討しているイメージ

個人目標設定 5つのステップ

1. 経営層、組織長、人事間での事業・部門目標の設定と擦り合わせ

「組織全体で達成したい目標」を基に、それを各事業や部門にどう配分していくのかを、経営層、組織長、人事担当者で擦り合わせましょう。目標を適切に配分し、それぞれの事業目標や部門目標を設定することがポイントです。

2. 部門間、部門内で体制の見直し

各部門の組織長が、互いの事業目標と部門目標を確認します。相互に抜け漏れをチェックし合い、難易度・実現性、果たすべき役割なども確認。その上で、部門間や部門内で体制の見直しを行い、それぞれの目標を再度設定します。

3. マネージャーとメンバーで、事業目標の共有と擦り合わせ

現場のマネージャーが、メンバーに向けて事業目標を共有します。チームに課された目標に対し、各メンバーの業務内容や、それぞれに期待することなどを擦り合わせていきます。

4. メンバーの個人目標を設定

マネージャーがメンバーと話し合い、個人目標を一緒に設定します。組織やチームにおける各自の役割に気づかせ、具体的な目標を設定しましょう。本人の能力や性格、キャリア志向を考えた上で、自主性を高め、成長につなげられるようなものとすることがポイントです。

5. メンバーの目標を組織長と人事に共有

メンバーの目標は、組織長と人事に共有しましょう。部門内の進捗(しんちょく)の確認や、今後の人事評価に役立てることができます。

個人目標の設定で役立つ「SMARTの原則」とは?

ここで、個人目標の設定にすぐ使えるフレームワークとして、「SMARTの法則」をご紹介します。「SMART」は、目標管理において、一般的に使われるフレームワークです。1981年にジョージ・T・ドラン氏の論文により発表された考え方で、かつては経営層向けの目標設定を目的に使用されていましたが、現在はビジネスパーソンの目標設定のために企業で活用されています。

「Specific」「Measurable」「Achievable」「Reasonable」「Time‐bound」という5つの因子の成功因子で構成され、その頭文字を取って「SMARTの法則」と呼ばれています。以降、具体的な内容について解説していきましょう。

人事考課で目標を設定する女性のイメージ

目標設定に使えるSMARTの法則

S:Specific(具体的である)

誰が読んでもわかる、明確で具体的な表現や言葉で書き表すこと。例えば営業職などの場合、提案先の顧客やアプローチ先となる企業を固有名詞として挙げ、対象とするエリア、顧客層などの詳細も盛り込みましょう。

M:Measurable(計測できる)

抽象的な目標ではなく、可能な限り数値化・定量化すること。達成度が見えやすく、モニタリングできる目標であることが大事です。定性的な目標については、達成度の目安や実行の頻度などの擦り合わせができているかもポイントに。

企画職の場合は、「企画を50本出す」など具体的行動を設定し、事務職などルーティンワークが多い場合は、「ミスの数や、残業時間数の削減」など、マイナスを減らす行動を設定するといいでしょう。

A:Achievable(達成可能である)

希望や願望ではなく、その目標が達成可能な現実的内容とすること。タスクの難易度をきちんと把握し、本人の能力に見合うかどうかを確認しましょう。達成不可能な目標はモチベーションの低下を招きますが、能力開発のためには、目標達成時に成長を期待できるようなものとすることがポイント。本人の能力を100とした場合、110〜120%程度のストレッチ目標を設定するといいでしょう。

R:Reasonable(適切である)

会社・部門・部署の目標達成に役立つものであること。事業や部署の方向性も踏まえたものとしましょう。また、本人が手がける業務領域や活動内容などに基づき、決められたルールに則って設定されていることもポイントです。

T:Time‐bound(期限が決められている)

納期やスケジュールなどの期限を示すこと。期限を決めることで、メンバー自らが目標達成への進捗を確認できるようになり、マネージャーも進捗共有とフィードバックをしやすくなります。また、目標が中長期にわたる場合、今期末の状態(マイルストーン)が明確になっていることも大事。息切れせずにモチベーションを保てるようにすることもポイントです。

目標設定のNGワード 5つの例

個人目標を立てる目的は、メンバー自身に、「何をすればいいか」「どう行動すればいいか」をわかりやすくさせることにあります。SMARTの法則を基に、目標設定を行う際には、抽象的な言葉や曖昧な表現を使わないことが大事。以下のNGワードを参考にしましょう。

NGワード例1)「効率化する」

→「○○の作業をシステム化し、所要人員○○人を○○人に、□月までに削減する」など、効率化する内容を具体的に表現させましょう。

NGワード例2)「企画する」

→「○○の機軸を折り込んだ○○を実現する○○構想を立案し、□月までに稟議承認を取り付け、上申内容を実施できる状態にする」というように、企画の狙い・内容を具体的に表現させましょう。

NGワード例3)「推進する」

→「○○の責任分担を決め、周知し、○○のチェックを毎日行う体制を□月までにつくり上げる」というように、推進する内容を具体的に表現させましょう。

NGワード例4)「努力する、頑張る」

努力の度合いは達成度の評価の対象にはならないため、それによって得られるであろう具体的な成果を明らかにさせましょう。グレードの低い若手メンバーの場合でも、具体的な行動などで表現させましょう。

NGワード例5)「管理する」

管理すること自体も評価の対象になりません。管理する内容やその方策を明確にし、「このような方法で管理することにより、どのような状態とするのか」を明らかにさせましょう。

取材協力・監修

曽和利光(そわ・としみつ)

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。最新刊『人事と採用のセオリー』(ソシム)も好評。

取材・文/上野真理子

リクナビHRTechの評価管理システムでは、業務内容や部署に応じて、個別の目標シートを設定できます。期初にはメンバーの業務ウェイトと達成基準を擦り合わせることも可能なため、こうしたフォーマットを活用すれば、マネージャーもメンバーも目標を設定しやすくなるでしょう。期末には達成度を定性・定量的に振り返ることができるため、目標達成の進捗管理にも便利です。
また、部門内や人事担当者など、社内での情報共有が簡単にできるため、部門ごとの目標達成度の確認・共有や、人事評価にも役立てることができます。

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