取材協力・ 監修/株式会社人材研究所 曽和利光

組織の業績アップや従業員の教育のためにMBO(目標管理制度)を導入してみても、現場のマネージャー(管理者)がメンバーの目標を管理できていないケースや、メンバーが目標に納得していないケースなど、うまく機能していないという企業も少なくないでしょう。この記事では、そんな悩みを持つ企業の人事担当者向けに、「目標管理」の意味や目的、成功させるためのポイントを、数々の人事責任者を務めた経験を持ち、現在は企業の採用コンサルティングやアウトソーシングを行う株式会社人材研究所・代表の曽和利光さんにご紹介いただきます。ぜひあなたの会社の目標管理に役立ててください。

この記事のポイント
  • <1>【MBOの目的は、「組織の目標達成」と「メンバーの支援」】 →MBOは、組織全体が掲げる目標の達成に向かうためのものです。目標達成のためには、組織、部署、チームにおける目標を擦り合わせた上で、メンバー(従業員)への適切な目標配分を行い、一人ひとりに適切な支援をしていくことがポイントです。
  • <2>【MBOのメリットは、「スモールゴールの明確化」と「自己管理能力アップ」】 →大きな目標に向かうために、スモールゴールを明確化することで、達成度を測ることができます。やるべきことが明確になるため、メンバーの自己管理能力のアップができ、モチベーションアップ、能力開発などにも役立ちます。
  • <3>【メンバーの「能力」「性格」「キャリア志向」を踏まえた適正な目標配分を】 →各メンバーの目標を設定する際には、それぞれの能力、性格、キャリアの志向をリンクさせた上で、能力に応じたレベルの目標を設定することが大事です。

詳しく知りたい方は続きをご覧ください。

MBO(目標管理制度)とは、メンバーを支援する手法の一つ

MBO(目標管理制度)を上手に活用するために、まずはその意味や目的、実施方法について把握しましょう。

MBOは、組織マネジメント手法の一つ

MBOは、「Management by Objectives」の略であり、組織のマネジメント手法の一つです。アメリカの経営学者ピーター・ドラッカーが提唱した「目標による管理と自己統制」という概念から生まれました。

部署やチーム、メンバーに対する目標を設定・管理し、自律的な行動を促すことにより、組織全体で掲げる目標を達成していく手法です。

MBO(目標管理制度)のイメージ

MBOの目的とは、メンバーに目標を配分し組織目標を達成すること

組織の目標を達成するために、一人ひとりのメンバーに目標を配分することが目的です。部署、チームごとに、達成すべき目標を配分し、さらに、メンバーに対し、適切な配分と目標の設定・管理を行うことで、進捗状況や達成度を確認することができます。これにより、個々のメンバーの活動を支援できるのです。経営目標や事業目標を基に、部署単位、チーム単位の目標を擦り合わせた上で、個人の目標を設定することがポイントになります。

MBO(目標管理制度)のメリットと、MBO成功のために押さえておきたいポイント

それでは、MBOを導入することによるメリットと、MBOの活用における課題について、具体的に解説していきましょう。

MBOで得られる、組織・メンバーそれぞれのメリットとは?

部署、チーム、メンバーなど、各階層の現場レベルで「それぞれの達成すべき目標」を明確化できる点にあります。組織とメンバー、それぞれのメリットについてご紹介します。

<組織のメリット>

  • トップダウンではなく、部署やチームなどの現場レベルで「何をすれば100%達成ができるのか」を明確にすることで、業務遂行における抜け漏れを解消できる
  • メンバーの目標を設定することにより、一人ひとりが自分の持ち場でその達成に向かうため、組織として果たしたい経営目標や事業目標の達成度をアップすることができる
  • 個々の目標達成度を基に、組織の目標の見直しや、昇進・異動などの人事考課にも役立てることができる

<メンバーのメリット>

  • 個別の目標を設定することで、やるべきことや進む方向性が明確になり、日々の業務における迷いがなくなる
  • 一定の期間内に、クリアすべき目標として「スモールゴール」を設定することで、息切れさせることなく、業務へのモチベーションをアップできる
  • 相対評価ではなく、個々の目標達成度を評価されることで、連動する報酬や昇進・昇格への期待値と、今後のキャリアに対する意欲を高められる

MBOを成功させるために押さえておきたい4つのポイント

MBOを効果的に運用させていくためには、以下のポイントを意識することが大切です。チームに課せられた目標を基に、メンバーにそれを配分していくマネージャーには、これらをしっかりと認識させましょう。

(1)「能力」「性格」「キャリア志向」を踏まえて目標を設定する

メンバーへの目標配分のベースにあるものは、「チームの目標達成」であり、そこにはさまざまな遂行すべきタスクがあります。個々の目標設定では、これらのタスクを適切に配分することがポイントに。メンバーが属するグレードだけでなく、個々の「能力」「性格」「キャリア志向」をしっかり踏まえた上で、各タスクの「職種別の難易度」「必要能力」「獲得できる経験」をマッチングし、目標を設定しましょう。本人の強み・弱みによって、向き不向きがありますし、目指すキャリアの方向性によってクリアすべき課題も変化するもの。一人ひとりに合わせた目標を設定することが大事です。

(2)低過ぎず、高過ぎない、適切な目標設定を行う

目標の達成度に応じて人事評価を行うため、メンバー間の目標に大きな差が出ないようにしましょう。例えば、「能力が高いメンバーが“さらに高い目標”を設定され、未達でB評価となった」「能力が低いメンバーが、その能力に応じて“低い目標”を設定され、達成してA評価となった」という場合、後者の方が高い評価を得ることになってしまいます。メンバー一人一人が納得感を得られるよう、グレードに応じた適切な目標設定を行いましょう。

(3)グレードに合わせ、「行動中心」、「成果重視」などのバランスを考慮する

若手や新人など、まだグレードが高くないメンバーは業務における自由度が低く、自分で何をすべきか決められないケースが多いものです。業務における裁量権と、設定できる目標の幅はリンクするので、グレードが低いメンバーは「行動」をメインとした目標とし、グレードが高くなるほど、「成果」を求める割合を高めるようにしましょう。

MBO(目標管理制度)の画像
Steps to succeed in business. Businessman drawing steps and arrow on chalkboard.

(4)MBOはノルマ管理や成果主義と切り離すこと

売り上げなどのノルマを押し付けるのみの目標設定はNGです。本人がコントロールできないものではなく、具体的な行動を目標としましょう。また、評価の仕方にも注意が必要です。目標を達成できたかどうかのみで判断し、プロセスを評価しないことも、モチベーションの低下につながるので注意しましょう。

MBO(目標管理制度)運用がうまくいかないケースと対策

最後に、MBOの運用を成功させるために、ケーススタディをご紹介します。うまくいかないケースと対策を知り、より良い運用に役立てましょう。

ケース1. 事業目標と個人目標がそろっていない

達成できない目標をチームに配分された場合に起きがちなケースです。チームのマネージャーの目標は、メンバーの目標を合計したもの。経営層や上層部との意思疎通ができていない場合、事業目標そのものや、チームへの配分が適正でない可能性があります。1つ上の階層と目標の擦り合わせをしっかり行い、各目標のチェックもさせましょう。

ケース2. マネージャーとメンバーでコミュニケーションが取れていない

モチベーションを高める目標設定やタスク配分ができず、一方的なコミュニケーションでMBOを実施しているケースです。メンバーの能力は把握しやすくても、キャリア志向は見えにくいもの。中長期的なキャリアについて話し合うことが必要です。1on1などのコミュニケーション手法を導入してもいいでしょう。

ケース3. メンバーが自身の目標を意識できる仕組みがない

裁量権のないローキャリアのメンバーや、成果の見えにくい企画職や事務職などに起きがちなケースです。どちらも具体的な「行動」を目標に落とし込むことがポイントです。前者の場合、リーダークラスに、行動プロセスを手順化させ、マニュアルを作成することで、やるべきことの項目を細かく明確にしましょう。「何をしたか」「何ができていないか」をチェックし、できることを積み上げる形で目標を意識させることができます。また、後者の場合は、目標を意識させるための課題設定の仕方として、例えば「企画を100本作る」「ミスをゼロにする」など、行動を数値化して目標設定をするといいでしょう。

ケース4. 人事などが一元管理できていない

MBOを導入したのみで、今後にどう生かすかを考えていないケースといえるでしょう。組織の目標を達成するためには、MBOの運用をスムーズにすることが大事です。一元管理ができるツールを導入することで、組織、部署、チーム、メンバーの目標まで、まとめてチェックできる仕組みが作れます。相互の目標配分における抜け漏れのチェックや擦り合わせから、人材育成や人事評価による適正な配属まで、さまざまなことに生かすようにしましょう。

取材協力・監修

曽和利光(そわ・としみつ)

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。最新刊『人事と採用のセオリー』(ソシム)も好評。

取材・文/上野真理子

リクナビHRTechの評価管理システムでは、業務内容や部署に応じて、個別の目標シートを設定できます。期初にはメンバーの業務ウェイトと達成基準を擦り合わせることも可能なため、こうしたフォーマットを活用すれば、マネージャーもメンバーも目標を設定しやすくなるでしょう。期末には達成度を定性・定量的に振り返ることができるため、目標達成の進捗管理にも便利です。
また、部門内や人事担当者など、社内での情報共有が簡単にできるため、部門ごとの目標達成度の確認・共有や、人事評価にも役立てることができます。

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