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「よい人事評価制度」とはなにか?

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2019.03.19
記事・レポート評価管理

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「よい人事評価制度」とはなにか?
人材に向き合うリクルートキャリアが考える
変化の時代を生き抜く企業の条件とは

話者

株式会社リクルートキャリア アドミニストレーション統括室 人事部 部長 木村 樹紀

「よい人事評価とは?」という問いに、皆さんはどのように答えるでしょうか。組織で働く限り、人事評価に無縁の従業員はいません。身近なテーマでありながら、ご自身の属する企業の人事評価制度が、本当によい仕組みになっているかどうか、自信を持つのはなかなか難しいことではないでしょうか。
リクルートキャリアは、人材に向き合う企業として、自らの人事評価制度とも向き合ってきました。「リクルートは特異な風土だから、自社とはまったく事情が違うだろう」――そんな印象を抱く方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、今の時代、多くの企業が共通して抱える課題は、リクルートキャリアが向き合ってきた課題と共通しています。それは、「変化の多い時代に対応するため、主体的・自律的に成長していける人材を育成しなければならない」ということです。

リクルートキャリアの人事評価制度が、どのように企業と従業員の成長を支えているのか。リクルートキャリアの人事部長・木村樹紀にインタビューしました。

環境変化に対応していくために、従業員自身が成長できる環境をつくる

リクルートは昔から「形がない商品」「市場の変化が激しい商品」を扱ってきました。人材事業に取り組むリクルートキャリアでいえば、景気の変動などに伴い、求人企業のニーズも求職者側のニーズも目まぐるしく変化します。私たちはそんな事業環境の変化、顧客の期待の変化に対し、柔軟に、スピーディに戦略や行動を変えていかなければならない状況にありました。

そして今、あらゆる業種の企業が、そうした環境の変化・複雑化にさらされています。
それほど大きな変化がなかった前時代、人事担当者は自社が培った「成功手法」の教育を行い、実行の管理さえしていれば、計画通りに目標を達成できていました。ところが、これだけ変化が激しい環境下では、計画通りに進まず、短期スパンで軌道修正を迫られるケースが増えています。これまでの勝ちパターンが通用せず、マネジメント層も「正解」がわからなくなっている現実があります。

これからの時代は、トップダウンではなく、マネジメント層とメンバー層が「共に考え、共創する」というスタンスが重要。現場で環境変化を肌で感じているのはメンバーだからです。つまり、メンバー一人ひとりが変化に即応し、よりよい商品やサービスの創出をけん引していく、そしてそのために必要なスキルを身に付けていく必要があります。企業としては、計画や方針を一方的に伝えるだけでなく、正解をともに導きだし、メンバー自身が主体的に考え行動し成果を出せるよう支援し、成長できる環境をつくる必要があります。

「Will」は成長の原動力。一人ひとりの「Will」の理解を

では、人はどうすれば成長するのか。リクルートキャリアはもともと成長意欲が高い人物を採用していますが、実際に成長を促すためには「Will」が欠かせないと考えています。Willとは、「ありたい姿」「なりたい像」「実現したいこと」といったものです。
実際、リクルートキャリアには多様なWillを持つ従業員がいます。「社会にインパクトを与えるサービスを生み出したい」「自分の会社を興したい」「政治家になりたい」、あるいは「将来、少年サッカーチームを作りたい」「田舎で宿を経営したい」と語るメンバーもいます。ゴールは人それぞれ異なっても、目指す姿が明確であれば、自分の能力を高めていく努力ができる。Willが成長の原動力となるわけです。

そこでリクルートキャリアのマネジメントにおいては、一人ひとりのWillを把握し、目の前の仕事がWillにどう繋がっているかをイメージできるよう対話します。自身のビジョン実現に近づく実感を持つことで、意欲高くミッション遂行に取組むことを理想としているのです。

こうしたマネジメントを行っていくベースとなるのが、「WCM(Will-Can-Must)シート」です。
マネジャーは期初の面談でメンバーとの相互理解を深め、本人の持ち味を把握します。その上で「Can(活かしたい強みや克服したい課題)」を確認し、それを活かし、伸ばすこと、そしてその人のWillを踏まえて「Must(能力開発につながるミッション)」を定量・定性の面から設定します。
このとき、もっとも重要なのは、双方にとって客観的に確認できる形で、設定した約束が記録されることです。振り返って評価をする際、シートの記載内容が、評価の妥当性や、双方が求める成長につながっているかを確認するよりどころとなるためです。これが納得感に非常に影響するのです。
なぜ褒められているのか。なぜ叱咤されているのか。それがメンバーの腑に落ちていることが成長の鍵です。

なお、リクルートキャリアでは2000年代初頭より、「ミッショングレード制」を採用しています。一つの職務について、年齢・役職・経験は関係なく、「遂行能力があるか」「それをやりたいという意志があるか」「Willにひもづいているか」などを基準に担当するミッションをアサインします。そして、期初に設定した目標に対する「達成度」で評価を行います。他のメンバーと比較しての「相対評価」ではなく、「絶対評価」が基本です。
また、査定はマネジャーがまず素案を作り、部単位で組織長が集まり、査定会議を実施。担当マネジャーがメンバーの成果をプレゼンして複数名の視点からすり合わせを行い、公平性・公正性を担保しています。
もちろん、最初から無条件に公平・公正な制度が完成していたわけではありません。常に「そのメンバーと無関係の要因による結果」をどう評価するか、という課題に対して議論を重ね、判断を積み上げ、汎用的な型にすることを繰り返し、公平・公正さを保っているのです。

目標設定・進捗確認・振り返り。半年間に3回の面談で信頼関係を醸成

目標設定にあたり、ベースとなるのが「Will」。マネジャーはメンバー一人ひとりとの面談で持ち味を理解した上で「将来どうなりたいか」を把握するよう努めます。
中にはまだ明確になっておらず、漠然と「人を幸せにしたい」「成長したい」などと語るメンバーもいます。そんな場合も、「幸せとはどんな状態か」「あなたにとっての成長とは何なのか」「どんなときに喜びを感じるのか」「どんな場面でモチベーションが上がるのか」などを掘り下げていき、その背景に何があるのか、本人のエネルギーの源泉を探っていくのです。
それを踏まえて、「5年後10年後、どんな姿になっていたいのか」を確認。そこに少しでも近づくために今何をすべきなのか、どんな強みを伸ばし、どんな課題を克服すべきなのか……を話し合います。
マネジャーは、企業の経営の視点と、メンバー個人のWillを理解する視点を行き来しながら、メンバーのWillと今期のミッションを結び付けていくのです。

こうしてWillと今期のミッションを結び付けて目標を定めたら、3ヵ月ほど経った頃に進捗状況を確認し、必要に応じて目標を調整。そして半年に1回、振り返りを行い、「目指す姿にどこまで近づけたか」「今後の課題は何か」についてすり合わせる。このサイクルを繰り返していきます。
すり合わせの中で、マネジャーが気づいていなかった達成や未達成の背景も、汲み上げることができます。
中には、Willがどんどん変わっていくメンバーもいますので、それに応じて仕事の意味づけを再設定します。

いずれにしても、マネジャーとメンバーが「目指す姿」を常に共有し、本人の持ち味を理解し活かし成果に結び付けることで信頼関係と意欲を醸成していくことが大切なのです。それにより、メンバー自身が納得感を持って、迷うことなく目標を目指すことができます。
リクルートキャリアの場合、基本的にこのような目標の見直しの面談は半年間に3回、それに加えてマネジャーとメンバーの日々の面談でフォローアップを行っていますが、業種・職種によっては目標の見直しの面談を1ヵ月に1回のペースで行ってもいいと思います。

もちろん、メンバーを正しく理解できるかどうかは、マネジャーの資質にも左右されます。自身がWCMシートを活用して成果を挙げてきたとしても、メンバーに対して同様にできるとは限りません。相手に遠慮して一歩を踏み込めなかったり、表面的な理解で終わったりして、メンバーの信頼やモチベーションを損ねてしまうこともあります。また、相手のWillが現在のミッションとあまりにもかけ離れている場合、どんな道筋を描けばいいかわからず、悩んでしまうこともあります。そうした事態を防ぐために、私たちは「WCM面談研修」なども実施し、マネジメント層の育成も同時に進めています。

「共創」時代のコミュニケーションツールとして

人事の世界では、近年「フラット型組織」「サーバント型マネジメント」なども話題に上がるようになっています。上の人間が計画を立て、指示してうまくいくことはもうないと捉えるべきだと思います。トップは、自分たちが現場に立っていた時代とはまったく環境が異なっていることを認識しなければなりません。

リクルートキャリアでは、常にマネジャーとメンバーのコミュニケーションツールとして、人事評価制度を運用しています。それにより、「ミスをしない人事」から、企業も従業員も「よりよくなるための人事」にシフトすることを目指しています。

どんな制度もツールも、それひとつですべての課題を解決するような飛び道具はありません。マネジャーとメンバーの、ひいては企業と従業員の共通言語をつくるつもりで、運用することが大切です。
これからは一人ひとりが考え、マネジメント層とメンバー層が「共創」する時代。共創の過程のコミュニケーションツールとして、よい人事評価制度を追求していくべきなのです。

ご紹介したように、人事評価制度をコミュニケーションツールとして運用していく際、どんな目標を定め、何を成功と定義したかを記録していくことは、双方の納得感にとって非常に大切です。
記録を残し、見直したり分析したりできるよう情報を整理して保管することで、貴社の人事評価制度をよりよくするための基盤ができます。
貴社の制度の見直しをはじめるなら、最初からすべて構築するより、簡単に一元管理の基盤ができるツールを活用しましょう。

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